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Monday, April 21, 2008

フォトジャーナリスト 豊田直巳氏による「戦争の作り方・平和の作り方」

                    Peace Journalist 菊野由美子

   「面白くなかったら、授業じゃない。」そんなキャッチフレーズで宣伝されていた豊田直巳さんの学習会は、テーマが重たく複雑にもかかわらず、ほんとうに楽しく分かりやすい授業だった。豊田さんは、イラクやパレスチナなどに何度も足を運び、現地の状況を写真に留め、反戦を訴えている。劣化ウラン兵器の問題を取り上げるため、自分が被爆するかもしれないリスクも抱えながら現地レポートを続けているフォトジャーナリストだ。

  4月20日、東京都東村山市民スポーツセンターで東村山・生活者ネットワーク主催の「豊田直巳の集中講座」に参加した。彼は、私たちが日々何気なく受け取っている情報にどれだけ流され、洗脳されているかを写真のスライドとともに軽快に説明してくれた。例えば、東京電力は、省エネなどを呼びかける広告を高額な費用を払ってテレビで流している。豊田さんは、「電気を商品としている会社なら、”たくさん電気を使って!”と宣伝するのが普通だが、その商品の消費を自粛させるような広告を出すということは、結局どうでもいい広告を出しているわけで、その目的は、原発反対などの報道をテレビなどにさせないためである。なぜならマスコミは、高額な広告料を払ってくれるスポンサーに都合の悪い報道
はできないからである、と説明した。
  
    戦争を正当化するためにも様々な情報操作が行われている。ボスニアはアメリカやNATO軍を見方につけるために、セルビアには強制収容所があると高額な宣伝費をTIME紙に払い、強制収容所に見えるような写真を載せた。それからNATO軍のコソボ紛争に介入が始まり、人道問題解決どころかさらに溝を深め、70万人の難民を生み出した。
   イラク戦争では、アメリカは、戦争を始める最後通告の48時間のタイムリミットより4時間前に攻撃を開始し、その最初の被害者は、豊田さんのイラク取材中のヨルダン人運転手のお兄さんだった。」 また、空爆はピンポイントであると報道されているが、イラクの市民シェルターを爆撃し、何百人もの市民が死んだ。


   そんなイラク戦争を「人道支援」としてサポートしているのが日本である。同時多発テロが起きた9.11の4日後に、アメリカに「Show the flag!」と言われ、翌月10月には日の丸がペイントされたC-130輸送機で315枚のテントをパキスタンに運んだ。費用は約3000万円。そのころ、韓国や英国はもっと安い費用で何千枚の単位でテントを運んでいた。ここで豊田さんは、だから何なのだと語らなかった。受け取る我々に委ねたのだと思う。また、2006年7月7日に自衛隊駐屯地であるイラクのサマワ市長からの感謝状が日本全国に流されたが、実はそれは自衛隊側が頼んだことだった。さらに、自衛隊が保有する860億円のペイトリオットは、地上から敵の弾道ミサイルを 打ち落とす兵器だ。しかし、アメリカ軍が自衛隊保有と同じ式のペイトリオットを実際に使っても、戦闘機しか打ち落とせなかったことが分かり、さらに460億円かけて最新式を導入する予定だ。しかし、その最新式も、アメリカ軍が使った際、イギリス軍やアメリカ空軍F戦闘機に命中しており、腹を立てたアメリカ空軍が逆に自国の最新式ペイトリオットを攻撃し破壊した、という前歴がある代物だ。


   豊田さんは言う、「情報に操作されず、疑い、自分で考える偏差値をあげてほしい。思考停止しないために。」イラクでの命がけの報道も、そのころ、多摩川にアザラシが出没してすっかり国民的人気者になっていた「タマちゃん」の話題にかき消されたそうだ。そんな豊田さんの経験談を 聞いていると、自分の中で様々な疑問が湧いてきた。視聴率やスポンサーのためのメディアになったのは、実は情報を受け取る我々 がそうさせたのではないか?「マスコミは何も真実を伝えない」と嘆くばかりでいいのだろうか?報道のあり方を変えるために、我々ができることがあるはずだ。などである。大阪からの女性参加者は、「豊田さんの講演は若者にも受け入れられやすいと思う。私もいろいろ考えさせられ、報道の見方が変わった。」と話した。


  大盛況に終わった講座の後、会場からそう遠くないカレー専門店「Maru」で豊田さんの写真に囲まれながらの懇談会があった。15名ほどの参加者のアットホームな雰囲気でさらに「目からウロコ」の話が始まった。情報操作はテレビや雑誌だけでなく、駅のホームの電光掲示板のお知らせや、町内放送などからも行われる。このレベルになると、流している側もその情報により、住民に必要以上の不信感や恐怖心を植え込む副作用を起こすことに気が付かないでいる。

  「思考停止」しない人達を増やしていくために私ができる第一歩は、豊田さんを故郷の宮崎に呼ぶことかもしれない。それと同時に、豊田さんからの情報も盲信してしまうのではなく、考え、疑問を持ったら彼に質問をぶつけてみるということも、考えることの"偏差値”を上げるために重要だと思った。
  情報を流す側と受け取る側の建設的な意見交換ができ、スポンサーや視聴率に左右されずに生き生きと報道の仕事をする人達の「未来」を思い描きながら帰路に着いた。

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